化学教育・ひとりごとNo.2(2004.11.19)   「伝統の力」

【まずは言い訳などを‥‥9月初めにNo.1をアップした際、「月に一度は‥‥」と啖呵を切りながら、雑務に紛れて2か月以上もサボりました。深く反省。
そしてもうひとつ。No.1は「雑感」と名づけましたが、中西準子先生の名高いHP*と同名では恐れ多いなと思い直し、「ひとりごと」に改名させていただきます。】
http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/(注:環境問題を考えたい人におススメ)


 前回も似たようなことを書いたけれど、日本の初中等教育にはきびしい教科書検定がある。
どの教科書会社も、何はさておき検定を通したい。
「これ以上はダメ」方式のもと、自由に書ける部分はあまりないから(近ごろ多少の緩和が進行中)、前回の検定で通った「安全パイ」の記述をそのまま使いたがる。
そこに力強い「伝統」が生まれてしまう。

 伝統のひとつが、「リットル」の表記、あの「小文字イタリック体」だろう。
もう40年以上も前に合意された国際規約で、「単位は(斜体ではなく)立体=ローマン体の文字で書く。例外はない」とされた。
むろん大学の教科書にあんな文字は見かけないし、海外では小中高校の教科書にも使わない。

日本国のこういう話は「計量法」で決まっているが、そこにもイタリック文字はいっさい顔を出さない。
まったくもって不思議な話。

 さる筋から入手した小学校算数の教科書(5社)は、なんと筆順指導つきでイタリック体の「デシリットル」を教える(ただしG社の本だけは、「斜体でない筆記体!」を載せている)。
こうした妙な「伝統」がいつ芽生えたのか、私には興味が尽きない(ご存じの方、ご教示を!)。

 立体文字の「エル」なら「l」か「L」だが、前者は「いち」と紛らわしいので、私たちはふだん「L」を使う。
たいていの文書がワープロ書きとなった昨今、いちいちイタリック文字を探す(つくる)のは馬鹿げてもいる。

 ‥‥というようなことを、別件でお会いした折り文科省の方にお話ししたら、よくわかっていただけた(と思う)。
いま中学『理科』の検定が進行中で、来年早々には高校『理科総合A・B』と『化学I』の検定がある。
そのプロセスの中で、面妖な「伝統の文字」も、何十年ぶりかに退治されるのではないか?

(★12月19日追記:本稿、旧版には「イタリック小文字の現物」を書いていたけれど、それだとHP作成ソフトが受けつけてくれないと判明したため、「リットル」文字を消した。
あの文字は、こんなところにも迷惑を及ぼしている。)

 単位のからみでもうひとつ。やはり40年前の国際規約で、「数値と単位の間は半角1文字アケる」ことが決まった。学術論文は私が学生のころからそうだし、センター試験の問題もことごとくそうなっている。
ところが日本の教科書や参考書、理科教育関係の雑誌類には、お作法に反して数値と単位をベッタリくっつけたものがそうとう多い。これも「伝統」のなせるわざか?

 タバコやドリンク類、薬のパッケージも、たいていは反則である。
まさか理科系出身の社員が皆無だというわけでもあるまいに。

 高校で理科を卒業する人にはどうでもよい話だろうけど、理科系に進学した人は、うっかりすると恥をかく(若いころ私もかいた)。
教え子がそうならないためにも、ちゃんとした書きかたを教室でぜひ教えてほしい。

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