化学教育・ひとりごとNo.6(2006.3.16)   「お父さんのための・・・」

「‥‥ワイドショー講座(TBS系)」は(ふだんTVを見ない身が世の話題についていくため)土曜の夜によく見るけれど、むろん今回の話はそれではない。
某出版社が企画したシリーズ本のタイトル(に近いもの)だ。私も「化学」で一枚かむ。
ほかは「物理」「生物」「天文学」「地球科学」と「数学」になる予定で、うまく運んだら2007年の春に刊行が始まる。

 大学の理科系に進む国民は多くない。大部分の人たちにとって理科は、高校を出たら最後、死ぬまで触れることのないジャンルだろう。
しかし、だから不要‥‥ということにはならない。
なにしろ科学がらみの話題は新聞にもTVにも近ごろ増えてきた。
環境の話が最たるものだし、ポリフェノールだのマイナスイオンだの、アミノ酸サプリメントだのと、日ごろの健康にからむ(ときにはあやしい)話も多い。

 そんなご時勢、「蚊帳の外」とならずに生きていくには、筋のいい科学知識を持っているのが望ましい。
だが現実はどうか? 大新聞の科学部にさえ理系出身の記者さんがあまり多くないせいだろう、「月間発電量500キロワット」なんて記事がしじゅう出る。
検査など何ひとつしなくても変異型クロイツフェルト・ヤコブ病にかかる(死ぬとはかぎらない)日本人はせいぜい100年間にひとりだというのに、ただの「約束違反」にすぎない背骨の混入を「国民の命にかかわる大問題だ」と叫ぶ人もいる。

 ひたすら大学入試を目標にしたいまの中高校教育では、ものごとを理科の目で判断する力を十分に養えていないのではないか?‥‥という発想で、上記のシリーズが企画された。
学習指導要領にはとらわれず、むろん科目それぞれの守備範囲すべてに及ぶことなく、「ほんとうに教えるべきことは何か?」を、大人(お父さん・お母さんを含む社会人)向けに語ろうというのが趣旨となる。

「化学」を担当する手前、一般向けの啓発書を眺め直すことにした。手始めに講談社「ブルーバックス」の何冊かを改めて読み始めている。その筋で高名な先生が執筆され、何十回か版を重ねた本にも、「希硫酸を電解したとき陽極ではOH- イオンが反応する」という勘違いとか、「H3O+ の呼び名はオキソニウムイオン」といったウソなど、首をかしげる話がいまも目白押しである。

 とりあえず大事なのは、「化学が<見えない世界>を相手にすること」や、「反応の矢印はなぜその向きなのか?」あたりかな‥‥と思いながら、いま中身の構成を思案中。

 かりに受験をすっかり無視した場合、中学や高校でどんなことを教えれば、世の中を「心おだやかに」渡っていける人間が育つのか‥‥といったテーマは、めったにとり上げられないような気がする。
皆さんどうお考えだろうか? ご意見をお寄せいただき、それを参考にしつつ今回の本を書けたら、わが国の科学リテラシー向上にそれなりの貢献ができる‥‥か?

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