黒板・チョーク・試験管  NO.3  赤ワインの蒸留  (2007.10.19)

中学1年の理科1分野の内容に、「蒸留」がある。
現在使っているG社の教科書では、水とエタノールの混合溶液をわざわざ作り、
蒸留させることになっているが、無色の液から無色の液が出てきてもおもしろくないだろうと、
本校では、赤ワインの蒸留を行っている(昔の教科書にはあった)。

50 mLの枝つきフラスコに赤ワインを20 mLと沸騰石を入れ、温度計を取り付け、
枝の部分にはリービッヒの代わりに濡れ雑巾の切れ端を巻きつけ、枝からビニル管、
ガラス管と接続して、氷水を入れたビーカーにつけた試験管に留出液を2 mLずつとって、
性質を調べるというもの。

ワインのアルコール度は約15%だから、はじめの2 mLには、かなりの割合でエタノールが
含まれ、手の甲につけるとスースーして、火をつけると燃える、2本目は半々ぐらい、
3本目はほぼ水、となる。
(共沸については触れないが、完全に分離できるとも言わないでごまかす。)

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10班(現在は約30人8班)の中学1年生に教師ひとりでやらせるのは、
年々困難になってきてはいるが、なんとか継続している。なによりも、赤い液から無色の液が
出てくるところが、いかにも蒸留で、おもしろい。

しかし、一昨年、肝を冷やしたことがあった。
いつもは、フラスコにワインと沸騰石を入れてビニル管とガラス管をつないだものを、
倒れないように200 mLのビーカーに入れて配るのだが、あるクラスで、準備が間に合わず、
ビニル管までしかつながないまま配った。先にガラス管をつないでやるように、と言って、
どこの班も、ちゃんと実験を始めた。

始まると、突沸させないように火加減を見て回るのに忙しい。
そろそろ、どの班も沸騰が始まったかなというころ、ある班が「沸騰しません」と言う。
行ってみると、温度は90℃を超えているが、確かに、沸騰はほとんどしていない
(本来は7580℃ぐらいで沸騰が始まる)。
よく見ると、わずかな留出液が、ビニル管の先で止まっている。
事態に気づいて「あぶない」と生徒を実験台からどかせたのと、枝とビニル管の接続が
外れて熱いワインが噴き出したのがほぼ同時だった。

なんと、ビニル管の先につないであったのはガラス管ではなく、留出液を手の甲につけて
感触を確かめる実験用にかごに入れてあった長さも太さもそっくりなガラス棒だったのだ。
閉鎖系で加熱して過圧になっていたわけで、ガラス器具が破損しなくて助かった。
急いで、他の班も見て回ると、なんと10班中3班が、ガラス棒をつないでいた。
幸い、他の班は温度がまだあまり上がっていなかったので、すぐに火を消させて、
事なきを得た。
ガラス管とガラス棒、重さが違うし、断面を見ればすぐわかるだろうに、中学1年生には、
区別がつかない。
そうなのかもしれない。

かつて、この実験で、突沸させてしまって時間内に実験ができず、放課後再実験に来た
生徒のひとりが、蒸留の終わったフラスコ内の赤い液を指して
「先生、こっちは子供の飲み物になったね」と言ったことがあった。

そんな中学生に、安全で面白い実験をなるべく多く体験させたいと思う。