定番 化学実験 (中学校版)

「気体の性質」(中学校第1学年)
二酸化炭素の製法と性質

提案者  YAMAGUCHI Maiko 
山 口 舞 子 
桐朋女子中学校・高等学校

                 

実験の狙い   中学校で扱う生徒実験にふさわしい気体は二酸化炭素,酸素,水素,アンモニア等いくつかある。どの場合においても,用いた物質が化学変化することによって「気体」が発生するが,その気体の性質を調べることで,気体も物質の1つであるととらえることができる。
 今回は,それらの気体の中で最も安全に実験ができる二酸化炭素をとりあげる。二酸化炭素を発生させる方法とともに,それを捕集する方法を確認していく。また,二酸化炭素の様々な性質を調べるにあたって,その方法を知ることもねらいの1つである。
準備 器具:三角フラスコ(100p3),ガラス管付きゴム栓,
   水そう,試験管(3本),試験管立て,試験管ふた用
   ゴム栓(3個),線香,マッチ

試薬:10%・2mol/l塩酸*1(市販の濃塩酸を1/6程度に薄めたもの),石灰石の小片,
石灰水*2(水酸化カルシウム水溶液),BTB溶液,リトマス紙

*1 塩酸は班の数だけ小分けにしておくとよい。
*2 水酸化カルシウム水溶液は前日までに作っておき,実験には上澄み液を使う
実験操作
(授業展開)
【展開1】気体の発生

@水そうに水をはり,試験管2本とゴム栓2個をいれて水で満たし,水上置換する準備をしておく。

A三角フラスコに石灰石を数個を入れ*3,そこに2mol/l塩酸20p3程度を加える。気体誘導用にガラス管を付けたゴム栓をし*4,気体発生を待つ。

*3 石灰石を三角フラスコにいれるときは,フラスコを傾けて静かに入れる。
*4 発生した気体がもれないように,しっかりゴム栓をする。


B気体が発生し誘導管を通って出てきたら,右の図1のように水上置換*5を行う。まず,三角フラスコ内にあった空気を除くために,試験管に集めた気体を捨てるという操作を3回繰り返してから,2本の試験管に捕集し,ゴム栓をしておく。
*5 二酸化炭素は空気より密度が高く水にやや溶けるので,下方置換法で捕集する方が望ましいが,ここでは,気体の発生を視覚的に見やすい水上置換法で行う。

【展開2】気体の性質

C発生している二酸化炭素を,試験管に入れた石灰水にくぐらせて変化を観察する。この確認だけであれば,右の図のようにすると簡単に実験を行うことができる。

D二酸化炭素を捕集した試験管の中に,火のついた線香を入れて燃焼の様子を観察する。

E二酸化炭素を捕集した試験管の中に1/3程度の水をすばやく加え,親指でふたをするようにして持ち,数回ふる。さらに,BTB溶液*6を加えて色の変化を見る。

*6 BTB溶液は酸性で黄色に,アルカリ性で青色に変色する。

F二酸化炭素を捕集した後,三角フラスコの中の石灰石がどうなっているかを観察する。
図1
結果とまとめ C 石灰水が白く濁る。さらに二酸化炭素をくぐらせていくと,透明の溶液になる。
D 火は消える。
E 試験管をふると,二酸化炭素が水に溶けるため,ふたにした親指にその圧力を感じる。また,その水溶液にBTB溶液を加えると,黄色に変色し酸性を示す。
F 石灰石の体積は,実験を開始する前より明らかに小さくなって減っている。
解 説 ・石灰石の主成分は炭酸カルシウムである。これが塩酸と 反応することによって二酸化炭素が発生する。
  CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + H2O + CO2↑… @
 加える2mol/l塩酸の量によって発生する二酸化炭素の体積(一気圧下での理論値)を表に表す。
加える2mol/l
塩酸の体積
10℃ 20℃ 30℃
10p3 232p3 240p3 249p3
20p3 464p3 481p3 497p3
30p3 697p3 721p3 746p3

・二酸化炭素をくぐらせると石灰水が白く濁ることから,発生した気体が二酸化炭素であることが確認できると指導する。これは以下に示す反応によるもので,白い濁りは,この反応で生成した難溶性の炭酸カルシウムである。
 Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3↓ + H2O … A
 石灰水が白く濁ってからさらにその操作を続けると,再び無色透明の溶液になる。これは,次に示すような反応が起こるためである。
 CaCO3 + H2O + CO2 → Ca(HCO3)2 … B
 石灰水に二酸化炭素を大量にくぐらせると,A式の反応後さらにB式の反応へとすすんでいく。B式の反応によって生成する炭酸水素カルシウムCa(HCO3)2は水溶性であるため,白い濁りはなくなる。もっとも中学校第1学年の段階では,二酸化炭素は石灰水を白濁させるという事実を確認する程度にとどめ,化合物の名称や反応式は質問があったときに答える程度で十分である。

・二酸化炭素中で線香の火は消えてしまうことから,助燃性がないことが確認できる。また,火を用いた実験の場合,生徒はその火が激しくなることを期待してしまう。二酸化炭素中で火が「消える」という事実をはっきりと確認させるために,炎をあげている線香を入れたり,空気の入っている試験管の中ではしばらく火が消えないということと比較させるなど,工夫が必要である。

・Eの結果から,二酸化炭素は水に溶ける*7ことがわかる。またBTB溶液を入れると黄色になることから,水溶液は酸性であると指導する。

*7 二酸化炭素の溶解度(1気圧,溶媒1p3に対して)
0℃ 20℃ 40℃ 60℃
1.71p3 0.87p3 0.53p3 0.37p3

片付け この実験で使用する薬品に危険なものはなく,特に回収する必要はない。理科室のマナーとして「使用した薬品は回収する」という場合は別である。また,薬品は全て水溶性であるため実験器具は水で洗浄すればよい。特に,反応後の石灰石が残っている場合には,これを回収し,水洗いをして次回にそなえておく。

この他いくつかのバリエーションについては、「化学と教育」誌 2003年51巻6号 定番!化学実験をご覧下さい。

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