定番 化学実験 (小学校版)

「物質とエネルギー」(小学校第5学年)
ものの溶け方

提案者  TAKANASHI Masahide 
高 梨 賢 英 
慶応義塾幼稚舎

                 

授業の流れ  「1ものが水に溶ける量には限度があること」及び「2ものが水に溶ける量は、水の量、水温によってちがうこと」の展開例を示す。
 この単元は「1…」「2…」と「ものが水に溶けても、全体の重さは変わらない」に13〜15時間を配当されている。
 教科書で取り上げられている物質は砂糖、食塩、ホウ酸、ミョウバンの4種類である。そのうち、ここでは、食塩とホウ酸を使った指導例を示す。
 食塩とホウ酸の溶け方を別々に実験させると、「食塩は温度が上がっても溶け方は変わらない。ホウ酸は温度が変わると多く溶けるようになる」ということは定着するようであるが、「同じ温度の水にはどちらが溶けやすいのか」ということは定着しにくい。そこで同じ量の水にそれぞれ食塩とホウ酸を溶かし、どちらが溶けやすいのかを調べ、「ホウ酸は溶けにくいが、水によく溶ける食塩にも限度がある」ということを確認する。次に、溶けにくいホウ酸も水温を上げると溶け、下げると結晶が析出する実験へと進む。食塩も加熱冷却により結晶が溶解、析出することを確かめる。この原理を応用して食塩を使った結晶工作をまとめの学習として行っている。
 また、教科書には記載がないが、筆者は溶解したものが水溶液中にあることを考えさせるために水溶液の体積にも注目させている。
準備  
上皿天秤の基本操作の学習のまとめとして「制限時間内に上皿天秤で食塩とホウ酸の秤量物がいくつはかれるか」というコンテスト形式の授業を行う。
 この単元で使う一定量の食塩(36.0g<1袋>、5.0g<3袋>、1.0g<3袋>、4.0g<1袋>)及びホウ酸(4.0g<1袋>)を秤量する。上皿天秤の操作に習熟させると同時にその後の授業で用いる試薬を用意させるという目的もある。
 計量は班ごとに行う。計量した食塩はチャック付きポリ袋*1に移して、教卓の電子天秤で再計量させる。誤差0.2gまでは合格である。この再計量の場面は、多くの児童の注視の中で行うようにする。誤差が大きいとやり直しになり、そのことがすぐに他の班に伝わってしまうため、コンテストは白熱したものになる。上皿天秤で正確に試薬の質量をはからせるのは難しいが、コンテストによって、上皿天秤
の操作に習熟させれば問題はない。上皿天秤による秤量は正確に行われ、また同じ重量の食塩とホウ酸を多く用意することができる。
 枚あたりの重量は0.6〜0.9gを示した。上皿にのせる薬包紙の代わりに、バランスデッシュ*2を用いると能率的に秤量が行える。
*1 チャック付きポリ袋(生産日本社)ユニパックB-4(85x60x0.04)300枚は780円。1枚の重量はほとんどが0.6gであった。(写真上)
*2 バランスデッシュは3種類あるが、中型(110 cm)(写真右)のものが使いやすい。価格は1箱1000枚入りが7200円。電子天秤で計ると1

実験操作
(授業展開)
1 ものが溶ける量には限度があることを確かめる。

【展開1】食塩とホウ酸の溶解
・ねらい
 計量スプーンを使用し、「水の体積」「水の温度」を同じにして、食塩とホウ酸はどちらがよく溶けるかを、溶ける量の違いに注目させながら調べさせる。実験を通して、食塩はホウ酸よりも溶けやすいことを明らかにする。
・器具、試薬
 食塩、ホウ酸、計量スプーン(2.5cc)、
 ビーカー(50cm32個)、割り箸
・実験操作と結果
@ ビーカー2つに水50 cm3をとる。
A 食塩(ホウ酸)を計量スプーンで計り*3、50p3の水に割り箸でかく拌をしながら溶かす。溶けたら、さらに計量スプーンで食塩(ホウ酸)を追加する。
B Aの操作を繰り返して、溶けきれなくなるまで何回かかるか*4を見い出す。
*3 食塩(ホウ酸)を計量スプーンですくい取り、盛り上がった部分を平らな物で除き、「すりきり状態」にするように指導する。児童が計量スプーンで計る「すりきり状態」は、状態が異なり重量もさまざまな値になるが、筆者が2.5ccの計量スプーンで試したところ、「すりきり状態」では、食塩は2.7〜3.1gを示し、ホウ酸は1.7〜2.6gを示す。
*4 50 cmの水に溶けるまでの時間を次頁の表に示す。かく拌は5〜6分行うようにさせる。



【展開2】食塩の溶解と体積変化
・ねらい
 食塩*5は水にどれぐらい溶けるのか及び溶液の体積変化について調べさせる。
・器具、試薬 食塩(チャック付きポリ袋に入れた5.0gの秤量物3袋、 1.0g秤量物3袋)、ビーカー(100 cm31個)、メスシリンダー(100 cm3)、割り箸
・実験操作と結果
@ ビーカーに入れた水50 cm3に食塩5.0gずつ3袋溶かす。
A 同じビーカーの水に続けて1.0gずつ溶かす*6。溶けたら、さらに続けて1.0g食塩を追加する。
B Aの操作を繰り返す。かく拌時間は8分を最長*7とする。溶け残りが出たら、水溶液の部分だけをメスシリンダーに移し、溶液部分の体積を計る。



*5 市販の食塩にはその用途によって添加物が加えられているものがある。塩事業センター(旧専売公社)が販売している食塩には、「食卓塩」「キッチンソルト」「精製塩」「並塩」「原塩」等さまざまな商品があるが、実験に使用する市販品名は塩化ナトリウムの純度(99%以上)や価格(1s107円、25s1641円)から判断して「食塩」がよい。
*6 かく拌は割り箸で行わせる。ガラス棒でもよいが、100p3のビーかでは、長すぎてビーカーを転倒させることがある。
*7 かく拌時間を長くすれば溶け残りは溶解すると思っている児童もいるが、ここでは授業時間内に実験を終了させることを優先する。その児童の疑問は次の展開3のねらいにつなげる。



【展開3】食塩の溶解
・ねらい
 とけ残りのある食塩水に食塩は溶けるか溶けないかを調べる。授業の最初に「容器の底に溶け残った食塩と後から入れた食塩の区別がつくか」と発問をして、児童に話し合いをさせる。上澄み液に食塩を入れる実験へ誘導する。
・器具・試薬
 ペットボトルを切った容器、食塩
 沸騰させて溶け残りのできた食塩水、
 紙パック、ビーカー(100 cm32個)
・実験操作と結果
@ 溶け残りのある食塩水*8の上澄み液を入れたビーカーと、ただの水を入れたビーカーを用意する。
A それぞれの水に、食塩の入った紙パック*9をつるす。
B 水につるした場合は紙パックの食塩から滝のような筋が流れ落ちる現象(シュリーレン現象)が観察できる。しかし上澄み液につるした場合は、その現象が観察されない。
*8 水に食塩を溶かした時、容器の底に食塩が溶け残っていても水溶液が飽和状態とは限らない。沸騰させた後の溶液を冷やすことで飽和状態の水溶液ができる。
*9 食塩を入れた紙パックは2つ用意して水と上澄み液とで同時に実験し、比較してみせる。1つのパックで演示する場合は、最初上澄み液、次に水の順に実験するほうが効果的である


2 ものが水に溶ける量は水の量、水温によってちがうことを確かめる。

【展開4】ものが水に溶ける量は水の量、水温によってちがうことを確かめる(ホウ酸)。
・ねらい
 量的に同じ条件の食塩水とホウ酸水溶液をつくる。ホウ酸水溶液は飽和するので、冷却してホウ酸を析出させる。ろ過により析出したホウ酸を取り出す。
・器具、試薬
 ビーカー(100p32個)、温度計、、割り箸
 メスシリンダー(100p3)、
 食塩(4.0g)、ホウ酸(4.0g)、
 保温容器(発泡ポリスチレン製のカップ麺等の容器)
・実験操作と結果
@ 100 p3のビーカー2つに水50 p3をとり4.0gのホウ酸と食塩とをそれぞれに加えてかく拌する。食塩はかく拌すると1分以内に溶解して透明な水溶液になるが、ホウ酸には白濁し、溶け残りができる。
A 溶け残りのあるホウ酸水溶液を、ビーカーごと保温容器に入れた湯*10200 p3(約60℃)につける。加温しながらかく拌する。溶け残りは、約6分で溶解し、透明な水溶液になる。
B 水を入れた保温容器にAのホウ酸水溶液のビーカーをつけて冷却する。ホウ酸の結晶が析出する。
C 析出したホウ酸の結晶をろ過*11する。
*10 この実験では湯を多量に使う。ポットなどに用意した場合は、教師がそれぞれの班を回って保温容器に入れる方が、安全である。
*11 かく拌棒を伝わらせてビーカーからろ紙上に液を誘導する。その際、濡らしたろ紙面は軟らかくなっているので、かく拌棒はろ紙の底や壁面に強く押し付けないように指導する。


【展開5】ものが水に溶ける量は水の量、水温によってちがうことを確かめる(食塩)。
・ねらい
 飽和食塩水を冷却して食塩を析出させる。
・器具、試薬
 食塩(36.0g)、ビーカー(200p3)、メスシリンダー(100p3)、割り箸、スタンド、温度計、なべつかみ
・実験操作と結果
@ 水100p3を200p3のビーカーにとり、食塩36.0g*12を入れ、わりばしでかく拌。とけ残りが溶解しないことを確かめる。
A 右図のように、食塩水をアルコールランプで加熱する*13。液温が70℃付近になると溶け残りは溶解する。
B 温度計を抜いた*14ビーカーを水の入った保温容器に入れ冷やす。
C 液温が下がり少量の食塩が析出するのを確認する。
D 少量の食塩が析出したCに水10p3加えてかく拌すると析出した食塩が再び溶解して透明な水溶液になることを確認する。
*12 食塩の溶解度は20℃で35.8g、60℃で37.1g。この実験に使用する水も食塩も正確に計る必要がある。
*13 スタンドのネジを締めたり緩めたりするときには必ず両手で操作をさせること。アルコールランプで加熱された部分は火を消しても高温になっている。ビーカーを下ろした後も触らないように注意する。もし触った場合には直ぐに水で冷やすようにする。
*14 溶液を加熱する時に温度計をビーカーにさしこんだまま手を放して水溶液をこぼすことがある。それを防止するためにもこの実験はスタンドを用いて行うのがよい。


【展開6】食塩を使った結晶工作
・ねらい
 ものが水に溶ける量は水の量、水温によってちがうことを利用して、食塩の結晶工作を行う。アルミの針金に両面テープを巻き、形に巻いた木綿糸に微結晶をつけそれを核に結晶を成長させる方法を紹介する。
・器具・試薬
 発泡ポリスチレンの容器*15、
 ポリプロピレン製容器(500p3以上)、
 割り箸、アルミの針金*16(Φ2o)、木綿糸、
 両面テープ、なべ(1L以上)、ドライヤー、
 軍手またはなべつかみ、コンロ
・実験操作と結果
@ 右図のように、アルミの針金に両面テープを巻き、その上に2〜3o幅に木綿糸を巻きつける。
A 針金を曲げてビーカーに入る程度の形を作り、木綿糸で割り箸につるす。
B なべに1Lの水を入れ食塩を360g以上加え、コンロで加熱する。加熱しているうちに鍋の底に残っていた食塩が溶けてしまった場合は、さらに食塩を加える。なべの底に食塩の溶け残りがあるようにする。
C 溶液が沸騰して表面に食塩の結晶が見えるようになったら、割り箸につるした形を溶液につけ、引き上げてドライヤーまたは風乾し微結晶を付ける*17。
D 次頁の図のように、ポリプロピレン容器のふたに開けた穴*18から糸を通しテープで固定する。
D 発泡ポリスチレンの容器の底に新聞紙を敷きポリプロピレン製容器を置く。
E なべの中の沸騰している食塩水(なべ底に残った食塩も一緒に)を発泡ポリスチレン容器の中のポリプロピレン製容器に一気に注ぐ。
F Dの形をビーカーにつるし、ポリプロピレン製容器のふたをしめて翌日まで放置する。
*15 発泡ポリスチレン製の保温容器は鮮魚の容器を使うとにおいが出るので、野菜を入れた容器を使用するのが良い。
*16 結晶をつける形をアルミの針金のかわりにモールで作ると染色剤が液に溶け出し、針金もさびがでる。また鉄の針金を使うとさびが出てくる。
*17 Cの操作で木綿糸に微結晶を付けておかないと、結晶は形の上で成長しない。
*18 ポリプロピレン製容器のふたに穴を開け、つるす形がぶつからないような位置に糸を調整する。
【参考】
・たばこと塩の博物館(東京都渋谷区神南1-16-8 03-3476-2041 http://www.jti.co.jp/Culture/museum/sio/index.html)では毎年夏に塩の特別展を開催している。その会期中メキシコの塩田から輸入した4〜5センチ角の天日塩を配布している。
・市販の食塩の価格については、財団法人塩事業センターのホームページで調べることができる。
http://www.shiojigyo.com/products/index.html
・針金に両面テープを巻いた上に木綿糸を巻くと、針金を変形させて糸がずれない。この工夫は初めて紹介する方法である。塩を使った結晶工作は化学会のホームページ(http://edu.chemistry.or.jp/teibanjikken/elem/S2/index.html)でも見られる。


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