定番 化学実験 (中学校版)

「物質の成り立ち」(中学校第2学年)
酸化銀の熱分解

提案者  YAMAGUCHI Maiko 
 山 口 舞 子 
桐朋女子中学校・高等学校

                 

実験の狙い   分解とは、1種類の物質が、性質の異なる2種類以上の物質に分かれる化学変化である。生徒実験で分解させる物質として、現行の中学校理科の教科書では5社のうち4社が炭酸水素ナトリウムを取り扱っており、酸化銀を取り扱っているのは1社にとどまっている。値段が高い*1という欠点を考えなければ、炭酸水素ナトリウムより酸化銀の方が生徒実験にふさわしい。理由は次の3点である。
 第一は、酸化銀の熱分解では、加熱することによって別の物質が生成している様子を視覚的に捉えることができる。黒色の酸化銀が白色の銀になる。炭酸水素ナトリウムも炭酸ナトリウムも白色粉末であるのとは明らかに違う。第二は、分解して生成した物質から元の物質が推定しやすい。この実験において生成される物質は「酸素」と「銀」であり、この2つの物質から元の「酸化銀」という物質名を推定することは、中学生にとっても比較的わかりやすい。少なくとも、炭酸ナトリウム・二酸化炭素・水の3種類の物質から炭酸水素ナトリウムを推定するよりも、銀と酸素の2種類の物質から酸化銀を推定する方が容易である。第三に、生成して得られた銀が貴金属であることも生徒の興味・関心を高める。
 化学変化のうち分解は、物質が何からできているかという原子や分子の概念に、つなげていくことが指導しやすいので、このことにも留意したい。
*1 酸化銀は「時価」として、カタログに価格が明示されていない。実際に1学級10班で各班で0.6gの酸化銀を使うとすると、1学級あたり6g必要で、費用は1,500円程度である。
準備
器具:試験管(3),気体誘導管,ガスバーナー,スタンド,クランプ,
    ガラス棒,ピンセット,線香,ろ紙,アルミ箔の容器(図1),マッチ,もえさし入れ,水槽
試薬:酸化銀(粉末、25g6000円)0.60g
実験操作
(授業展開)
【展開1】
 【展開1】 酸化銀の熱分解
@酸化銀を観察する。
Aアルミ箔の容器*2に酸化銀を入れる。酸化銀がこぼれないように注意しながら容器を試験管の中に入れ、ガラス棒で奥まで押し入れる。
*2 試験管に入る程度の木片や使いきった単三の乾電池などを用意し、これを型に上図のようにアルミ箔で包むようにして容器を作る。
Bクランプで試験管の口元*3をはさみ、スタンドに水平に固定する。
*3 加熱する際の炎から、できるだけクランプが遠ざかるようにしておく。
C水槽に水をはり、試験管を2本入れておく。
DBの試験管に気体誘導管のゴム栓を取り付け、管の先をCの試験管に入れ、水上置換の準備をする(図1)。
E酸化銀の入った容器の下を中火で加熱する。気体が発生して試験管に集まったら1本目は捨て*4、続けて捕集しゴム栓をしておく。その後、気体の発生が終わり酸化銀の粉末の色が完全に変化したら加熱をとめる。この際、気体誘導管の先を水槽から出しておくよう指示する。
*4 初めに捕集される気体は、加熱されている試験管の中にもともとあった空気であるため、試験管1本分程度の気体は捨てておく。
【展開2】 生成物の確認
@気体を集めた試験管のゴム栓をとり、火のついた線香を入れて炎の様子*5を観察する。
*5 炎は上に向かって大きくなるので、試験管を少し傾けた方が長く観察することができる。
Aアルミ箔の容器の中の白くなった物質をろ紙に取り出し、観察する。その固体を試験管の底でこすって変化を観察する。その後、物質をできるだけ固くまとめて、電気が通るかを確かめてみる。

図1 実験装置
 図2
結果とまとめ この実験の化学反応式は次のようになる

2Ag2O  →   4Ag  +   O2
酸化銀       銀      酸素

・酸化銀は黒い粉末だが、加熱していくと加熱された部分から白っぽく変化してくる。最終的には全て灰色がかった白色になる。
・アルミ箔の容器に入れることによって、外側からつまり加熱された箇所から色が変化していくのがはっきりとわかる。また取り出すときも試験管にこびりついたりせず便利である。
・集めた気体に火のついた線香を入れると、炎が大きくなり、酸素が生成したことが確認できる。
・生成した白い固体を試験管でこすると、きらきらと光り出す。また電気伝導性があることから、この白い固体は金属の性質を持つことが確認でき、銀であることが推測される。
・白い固体と、こすってできた光る物質が別の物質だという認識を持つ生徒がいるので注意する。ここでの違いは物理的な問題で、化学的に異なる物質ではない。金属は磨いて表面をなめらかにしなければ光らない。
表 酸化銀の量に対する分解生成物のおおよその生成量
用いる酸化銀 発生する酸素 生成する銀
0.6g 40ml 0.5g
0.9g 60ml 0.7g
1.2g 80ml 1.0g
1.5g 100ml 1.2g

バリエーションについては、「化学と教育」誌 2004年52巻2号 定番!化学実験をご覧下さい。